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大阪地方裁判所 昭和46年(わ)582号 判決 1974年5月16日

本籍

大阪市天王寺区東高津町八番地の一二

住居

右に同じ

既製服製造販売業等

村田昌昭

昭和年七月一日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき当裁判所は検察官高橋哲夫出席のうえ審理を遂け、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役七月および罰金一、二〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、大阪市天王寺区東高津町六番地の三に本店を置いて、スリーMの商号で既製服製造販売を営むかたわら、貸金業及び同町八番地の一二において喫茶店を営業していたものであるが、所得税を免れようと企て、

第一  昭和四二年分の所得金額が二、一三九万六、〇八二円、これに対する所得税額が九九五万四〇〇円であるのに拘らず、公表経理上売上の一部を除外し、期末たな卸商品の一部を除外するなどの不正な方法により、右所得金額の一部を秘匿したうえ、昭和四三年三月一四日大阪市天王寺税務署において、同署長に対し、同年分の所得金額が七三二万五、二二五円、これに対する所得税額が二三五万一、三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、更にその後同年八月八日右申告額は誤記である旨の理由により、前記実際所得金額中一、四〇二万八五七円を秘匿して同年分の所得金額七三七万五、二二五円、これに対する所得税額が二三七万六、三〇〇円である旨の虚偽の所得税修正申告書を提出し、よって同年分の所得税七五七万四、一〇〇円を免れ

第二  昭和四三年分の所得金額が三、六一九万八四三円、これに対する所得税額が一、九一七万三、五〇〇円であるのに拘らず、前同様の不正な方法により、右所得金額中二、四三二万五、二九四円を秘匿したうえ、昭和四四年三月一四日前記天王寺税務署において、同署長に対し、同年分の所得金額が一、一八六万五、五四九円、これに対する所得税額が四七四万七〇〇円である旨の虚偽の所得確定申告書を提出し、よって同年分の所得税一、四四三万二、八〇〇円免れ

第三  昭和四四年分の所得金額が六、二一六万二、〇〇二円、これに対する所得税額が三、六七二万七、三〇〇円であるのに拘らず、前同様の不正な方法により、右所得金額中四、二九四万三、〇五三円を秘匿したうえ、昭和四五年三月一六日前記天王寺税務署において、同署長に対し、同年分の所得金額が一、九二一万八、九四九円、これに対する所得税額が八六二万六、九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よって同年分の所得税二、八一〇万四〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一、第一回公判調書中の被告人の供述部分ならびに被告人の当公判廷における供述

一、第四回ないし第六回各公判調書中の証人細見品造の各供述部分

一、第七回ないし第九回各公判調書中の証人中川光男の各供述部分

一、証人上田博三の当公判廷における供述

一、細見品造(昭和四五年一一月六日付、 以下日付についてはすべて45・11・6付の記載方法による45・11・25付)、村田時子(45・6・24付45・11・11付)、越智学、水本秀夫、森川一雄、許仁洙こと高橋充、増田良金(45・10・21付、45・11・25付)、足立勝彦の収税官吏に対する各質問てん末書

一、村田清の検察官に対する46・2・16付、46・2・19付各供述調書

一、細見品造の検察官に対する46・2・17付供述調書

一、田北昭夫作成の供述書

一、松下錬作成の確認書六通

一、木曽一義作成の確認書一通

一、梅川通夫作成の確認書二通

一、嶋崎市三郎作成の確認書一通

一、中島厳作成の確認書一通

一、国税査察官中川光男外一名作成の45・12・1付銀行関係調査書類

一、国税査察官中川光男作成の45・12・1付資産関係調査書類

一、同人作成の45・11・30付喫茶関係調査書類

一、同人外一名作成の45・12・1付貸付金関係調査書類

一、国税査察官久保浩作成の45・12・1付減価償却費調査書類

一、被告人の検察官に対する供述調書四通ならびに収税官吏に対する質問てんまつ書五通

一、押収にかかる手帳(黒表紙細見メモ)一冊(昭和四六年押第八六二号の六)、金銭出納帳(44年分中野店)一冊、同(44年分茨木店)一冊(同押号の一二、一三)、売上帳(44年分針中野店)一冊、同(44年分「11/25S12/30」茨木店)一冊(同押号の一七、一八)、同(香里店43・11・22S44・12・31)一冊(同押号の二一)、金銭出納帳(43年分)二冊(同押号の二三)、鍵商支払領収証(42年分)一綴(同押号の四三)、金銭出納帳二冊(同押号の四六)

判示第一、第二の各事実につき

一、米沢好明作成の供述書

一、細見品造の収税官吏に対する45・12・18付質問てんまつ書

一、収税官吏坂東覚、同湊谷竜蔵、同山野茂各作成の現金預金有価証券等現在高検査てん末書各一通

一、押収にかかる税務関係書類一綴(昭和四六年押第八六二号の八)、四二年分仕入帳一綴、四二年分売掛帳一綴、四二年分支払手形記入帳一冊(同押号の二六ないし二八)四二年分売掛帳一綴、四二年分別冊売掛帳一綴(同押号の四〇、四一)

判示第二、第三の各事実につき

一、押収にかかる四三年分売掛帳二綴(昭和四六年押第八六二号の一九、二〇)、四三年分仕入帳(同押号の二一)、四三年分売掛帳一綴(同押号の四二)

判示第一の事実につき

一、天王寺税務署長作成の46・1・7付証明書三通(但し、四二年分の所得税の確定申告書に関するもの)

一、庄司政夫作成の調査照会回答書

一、押収にかかる曽木村山林の書類一綴、こくごノート一冊、権利証書及び関係書類(八尾市黒谷)一綴、登記済証書(曽根村農協)五綴(昭和四六年押第八六二号の一、二、四、五)金銭出納帳(41・6・19S41・12・31)一冊、同(41年分)一冊、仕入帳(41年分)一冊、売掛帳(41年分)一綴(同押号の二九ないし三二)、普通預金通帳(大和銀行上六支店)一通、源泉徴収簿(上六ラシヤクラブ)一綴(同押号の六二、六三)

判示第二の事実につき

一、天王寺税務署長作成の46・1・7付証明書二通(但し、四三年度分の所得税の確定申告書に関するもの)

一、梅岡シゲの収税官吏に対する質問てん末書

一、押収にかかる不動産契約証書(寝屋川市、梅岡シゲ)一通(昭和四六年押第八六二号の三)、賃貸借契約書(香里)一通、不動産売買契約証書(茨木市双葉町)一通、同(香里)一通(同押号の三三、三五、三七)、昭和四三年度源泉徴収簿(同押号の六四)

判示第三の事実につき

一、天王寺税務署長作成の46・1・17付証明書(但し、四四年度の所得税の確定申告書に関するもの)

一、藤原京一、城野孝一、小林昭彦の収税官吏に対する各質問てん末書

一、須賀修一郎、原壮一各作成の確認書各一通

一、押収にかかるたな卸表(44・12・31現在)一綴(昭和四六年押第八六二号の七)、金銭出納帳三冊(同押号の九ないし一一)、四四年分仕入帳一綴、四四年分売掛帳三綴(同押号の一四ないし一六)、金銭出納帳(香里店)一冊、四四年分チェーン店宣伝費内訳帳一冊(同押号の二四、二五)、不動産売買契約証書(駒川町)一通、同(東住吉区駒川町)一通、決算付属明細書二綴、メモ一綴、四四年総勘定元帳一綴(同押号の三四、三六、三八、三九、四四、四五)、昭和四四年度源泉徴収簿(上六ラシヤクラブ)、一綴、同源泉徴収簿一綴(同押号の六五、六六)

(弁護人の主張に対する判断)

左記争点となった点につき、当裁判所の判断を適記する。

1. たな卸高算定について

本件の場合、昭和四四年末のたな卸高については前掲の如くこれを確定する証拠が存在するか、昭和四二年、昭和四三年各年末のたな卸高を確定し得る資料がなく、これらを推計によって算定せざるを得ないところである。そしてこのような推定計算による場合は、弁護人主張のように出来る限り合理的且つ妥当性のある方法に則り、可能性のある限り被告人に有利な方法に従うべきものであると思料される。ところで捜査機関は捜査の段階において、被告人の従業員で経理担当者であった細見品造が昭和四四年三月末のたな卸高等を記載していたメモ(証四四号の細見メモ)に基づき、同年四月から一二月までの間の利益率を計算し、その利益率により昭和四二年期首及び昭和四二年、同四三年各年末のたな卸高を推計し(とりわけ昭和四一年末即ち昭和四二年期首の分については、同年度の帳簿その他の資料が極めて不備で、証拠上確定し得るのは売上額のみで、仕入金額、外注工賃、消耗品費等についてはこれを立証する資料がないから、昭和四四年度及び昭和四三年度の仕入、外注費、消耗品費等の売上額に対する比率を計算し、右両年度の平均率を算出し、これを昭和四二年度の売上額に乗じて仕入金額等を算出し、ついで売上利益を利益率によって計算し、たな卸高を算定している、更に右細見の供述を基礎に、昭和四二年期首を一億一〇〇万円、昭和四二年末を一億一、〇〇〇万円、昭和四三年末を一億円と認定して公訴を提起した、しかしながら右細目メモは業務の過程において作られた素書きのメモで或程度の真実性はあるとしても必らずしも正確なものとは認め難い。そこで証六号の黒表紙細見メモに昭和四四年七月末及び八月末現在のたな卸商品の記載があり、この記載は右たな卸高以外のその他の記載部分例えば市売上、外販の数字について昭和四四年度市元帳の記載と合致しているし、且つ整然と記載されている等信憑性は高いものと認められる。更に証人上田博三の証言を併せ考えると、この点に関する弁護人の主張は充分首肯するに足るものと認めねばならない。よって利益率の算定ならびに昭和四一年末ないし昭和四三年末のたな卸高の算定については弁護人の主張を採用し、たな卸高の関係で、昭和四二年分につき一、五〇一万三、二二七円、昭和四三年分につき二、〇二一万九、四八三円、昭和四四年分につき一、七九八万七、六六九円をそれぞれ減額認定した次第である。

2. 店主(個人)手許現金について

昭和四三年一月に預入られた簿外預金六〇〇万円につき、捜査段階において被告人及び前記細見品造はそれぞれ検察官に対し、店の売上金から預入れた旨の供述をしていたことに基づき、検察官は昭和四二年、同四三年、同四四年各年末の現金について六〇〇万円を加算して公訴を提起したのであるが、被告人は当公判廷において右の預金は手許金から預入れたと供述し、右細見も公判廷で同趣旨の証言をしている。一方手許現金としては右六〇〇万円とは別に昭和四二年末に二、二〇〇万円の簿外現金の存在が捜査段階において認められており、更に査察官は右の二、二〇〇万円の手許現金のなかから前記簿外預金六〇〇万円を預入れたと認定していたことは証拠上明らかであることに鑑みると、右被告人ならびに右細見の当公判廷における各供述及び供述記載は信用できるに足るものと認められ、弁護人のこの点に関する主張も採用に値するものというべく、昭和四二年一二月末に入金された山下木原分の売掛金二二五万七、四〇〇円の計上もれを加減したうえ、現金の関係では昭和四二年分につき三七四万二、六〇〇円、昭和四三年分につき二二五万七、四〇〇円をそれぞれ減額認定した。

3. 預金について。

この点に関する弁護人の主張は、証拠上も明白であって採用すべきであり、即ち昭和四四年末において六四万八、八〇〇円の計上もれを認め、同年分につき同額を減額認定した。

(法令の適用)

一、判示各所為につき

所得税法二三八条一項(情状により懲役刑と罰金を併科する)

一、併合罪の加重につき

刑法四五条前段、四七条、一〇条、四八条(犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をする)

一、換刑処分につき

同法一八条

一、懲役刑の執行猶予につき

同法二五条一項一号

一、訴訟費用の負担につき

刑訴法一八一条一項本文

よって主文のとおり判決する。

昭和四九年六月三〇日

(裁判官 橋本達彦)

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